TECO活動

私たちNMKVは軽自動車の企画開発会社ですが、それと同時に、両親会社の橋渡し役として両社の事業に相乗効果を与えることも重要な役割です。
今回は、NMKV・企画開発車の生産拠点である三菱自動車の水島製作所を中心に行われているコスト改善の取り組み「TECO活動」についてご紹介します。「TECO活動」の推進役であるNMKV・Vehicle Functionグループ理事(2014年3月当時)・野村真三(三菱自動車出身)、ゼネラルマネージャー・笠間功(日産自動車出身)に話を聞きました。

▲写真左から/野村、笠間

TECO活動...サプライヤー様と一体となった共同活動

- TECO活動という名称は野村さんの発案であると伺いました。
まず、TECO活動について教えていただけますか。

野村:三菱自動車の水島製作所では、「水島チャレンジ」という業務改善の取り組みを行ってきました。

そのなかで特に、NMKVが企画開発したモデルの資材費にかかわるコスト改善に取り組む活動を、TECO活動と名付けました。TECOとは「Total Effort for Cost Optimization」の頭文字を取って、「資材コストを最適なものにするために、総力を結集して取り組みましょう」という思いを込めて命名しました。もともと三菱自動車にはSWS(Supplier Work Shop)というコスト改善活動がありましたが、そこに笠間さん達が日産自動車で取り組んでこられたTHaNKS活動の手法を取り入れて活性し、発展・強化したものがTECO活動です。NMKVでは、両社の強みを「いいとこ取り」して+αを生み出すことを「NMKVモデル」と呼んでいますが、これはまさにそういう取り組みだといえます。

笠間:「総力を結集する」の中には、日産自動車・三菱自動車・NMKVだけでなくサプライヤー様も含んでいます。クルマの生産コストの7割は部品資材の購入に関わるものです。ですから、そこに手を入れて、サプライヤー様にもご協力いただいて一緒に改善することで大きな効果を生むわけです。2013年度はNMKV開発車として初めての試みでもあり、サプライヤー様数社を選出の上、取り組みを開始しました。ちなみに、TECO活動は改善対象の部品を一次サプライヤー様だけでなく、二次、三次まで含んでいます。コスト改善につながる部分は深く掘り下げているわけです。

野村:この活動のポイントは、日産自動車のサポートのもとに、サプライヤー様と三菱自動車・NMKVが対等な立場で一緒に汗をかくことと、解決に向けて一緒に考えること。そして、そこで生まれた成果は、両者がきちんと50:50で分け合うことです。そういう活動ですので、サプライヤー様からの賛同もいただき、非常にスムーズに取り組むことができました。

- TECO活動の流れを教えてください

野村:TECO活動は準備から最終クロージングまで約半年の取り組みですが、その基本は現場を見ることです。サプライヤー様を事前に訪問して理解を深めた上で、4日間連続で集中改善活動を行います。そこで見えた課題を、フォロー会議を繰り返しながら解決するという流れになります。

- サプライヤー様の反応はいかがでしたか。

▲TECO活動風景

野村:抵抗感はありませんでしたが、初めはどんな活動だろうという不安の声がありました。従来の活動では数人の担当者が日帰りで行く、それも部署入れ替わりで訪問して打ち合わせるといった程度のものでしたが、今回、多い時には、事前訪問に各工程担当者25名で伺いました。先方も同様の人数が参加したので、総勢50名の活動になったわけですから、非常に壮観でした。サプライヤー様も、「これは今までとは違うぞ」という空気を感じてくれたと思います。

笠間:集中改善は、サプライヤー様に一方的に指示するようなものではありません。現場をつぶさに見ていって、改善のポイントが見えると、我々からも分析手法や改善のヒントを示し、それを元にお互いに議論しながら一番導入しやすい改善方法を見つけるというやり方ですので、抵抗なく受け入れていただけました。日産自動車のTHaNKS活動にはコスト改善のためのベンチマークのフォーマットやツールなどが豊富にありますので、それらを活用することで、改善の様子がよく見えました。

野村:旗振り役として立ち会っていましたが、非常にエキサイティングな活動でしたよ。

4日間の集中改善に大きな効果が

- 十分な手ごたえを感じられたのですね。

野村:はい、成果も出ています。ほとんどの領域で数値目標を達成しましたし、達成できなかったものもきわめて目標値に近い成果を上げることができました。実は、目標値は少し高めに設定したつもりだったので、これは驚きでしたし、非常にうれしかったですね。サプライヤー様からの評価も高いようですし。

笠間:工程をちょっと変えるとか、部品のパレットの置き場をちょっと動かすなどのその場でやれる改善から、改善に数か月かかるような部品設計の見直しまで、改善のアイデアは数百件を超えました。それを実施して行くわけですから、日々成果を実感できます。

野村:物流の面で言いますと、普段カーメーカーの人間は完成した納入品の姿しか見ていませんが、TECO活動では子部品のサプライチェーンを大きな紙に全て書き出します。手間は掛かりますが、これによってある子部品が東から西へ輸送され、また東へ戻るとか、途中で不必要に積み換えが行われていることが明らかになり、多くの合理化アイデアが出てきます。細かいことですが、ひとつひとつ改善できないか検討しています。

笠間:それに、4日間も寝食を共にしていると、本音の困りごとのようなものも話してもらえるようになります。そうなれば、「うちにはこういう専門家がいるから今度連れてきますよ」となりますし、お互いへの理解と信頼が深まるという点での効果もありました。

NMKVが実現したTECO活動

- TECO活動において、NMKVの役割とは何でしょうか。

野村:私や笠間さんの役割は、TECO活動の旗振り役であり、とりまとめ役といったところです。全体の企画や成果の集計・分析などを行っています。

笠間:日産自動車と三菱自動車が手を取り、NMKVというユニークな会社ができなければ、TECO活動そのものがなかったといえると思います。それがすべてです。

-最後に、今後のTECO活動の展開について教えてください。

野村:2013年度は手探りしながらの活動でしたが、TECO活動は非常に有効であることが分かりましたので、2014年度以降は対象のサプライヤー様を拡大して続けて行くことになると思います。

- 今日はありがとうございました。

2014年5月インタビューより ※掲載の所属、役職はインタビュー当時のものです。