車両プロジェクトマネジメント
第1弾のデイズ/eKワゴン、第2弾のデイズルークス/eKスペースと2車種を市場に送り、新たなプロジェクトに取り組み始めているプロジェクトマネジメントチーム・マネージャーの小野秀昇(三菱自動車出身)、設計チーム・ボディ担当エンジニアリングマネージャーの屋形高志(三菱自動車出身)、設計チーム・電装担当のエンジニアリングマネージャー(2014年3月当時)の兒島光成(三菱自動車出身)の3名に、NMKVの仕事について話を聞きました。
▲写真左から/小野、屋形、兒島
軽自動車のクルマづくりは「スピード感」
- NMKVとなってから第2弾の2車種が発売になりました。皆さんはこれまでいろいろなクルマづくりを手がけてこられたわけですが、軽自動車のクルマづくりは登録車と何か違いはあるんでしょうか。
小野:クルマのプロジェクトマネジメント業務を長年やってきましたが、軽自動車を担当するのは、実ははじめてです。そこで驚いたのは、軽自動車のクルマづくりのスピード感ですね。中級セダンなどと違って、新技術にしろ、新コンポーネントにしろ、その採用と改良のスピードには驚くべきものがあります。
兒島:私は電装関連の設計を担当しています。軽自動車と登録車の両方を手がけてきたのですが、昔のイメージで捉えられないほど軽自動車のクルマづくりは進んでいます。かつての軽自動車というと、普及している技術でさえ採用しないことがありましたが、今はむしろ軽自動車が最先端の技術を牽引する、というケースが目立ち始めています。
屋形:私も登録車の経験の方が長いのですが、スピード感が違うというのは本当にそう思います。それに加えて、最終的に軽自動車の規格に納めなければならないので、そこにも難しさを感じますね。
- そのスピードの速さも相当のものがあったと伺いましたが。
小野:最初スケジュールを出したときは、担当者からこれは無理じゃないか?という声があがったほどでした(笑)。絶対やり遂げるという強い意志で、いろいろな無駄を削減したり、作業の効率化を図ったり、人的リソースも効果的に集中させたりしつつ、予定通りの日程を達成することができました。今振り返っても、うちのチームはよくやったなぁ、と我がことながら感心しますよ(笑)。
屋形:設計の現場でも相当戸惑いがありましたが、今となっては日程工期の短さにも理由があるな、と思います。デイズルークス/eKスペースではワンタッチ電動スライドドアを担当しましたが、スーパーハイトワゴンのドアの剛性と重量のバランス、両面ワンタッチスライドドアなど新しいことにも取り組みました。きっとこれらも、すぐに目新しいことではなくなるでしょう。NMKVのクルマづくりは、そういう熾烈な競争の中での仕事であることを日々感じながら、スピード感を持って取り組むことは重要だと思いました。本音では、かなり大変でしたが(笑)。
お客様の快適のために、妥協しないさせないNMKVのクルマづくり
- 2社の車を生み出すNMKVのクルマ「ならでは」の特徴があれば教えてください。
小野:日産自動車・三菱自動車・NMKVの3社の議論は会社を代表した議論ですから、非常に重みがあり、それを差し戻すことも、後戻りも許されないという緊張感があります。そして、NMKVは決断も早いし、方向性も意思も非常に明確です。それを反映したクルマづくりをすることが、私たちの仕事の最も重要な特徴だと思います。
屋形:もう一つの特徴としては、日産自動車・三菱自動車の2社が有している技術を活用することができ、応用できるという点ですね。
兒島:たとえば、日産自動車が先進的に取り組んでいるアラウンドビューモニターを日産はデイズから、三菱はマルチアラウンドモニター(バードアイビュー機能付き)をeKスペースから搭載しています。これは、軽自動車ではもちろんはじめてですし、登録車でもまだ採用していない車種がある先進的な技術です。こうした技術を親会社2社は数多く持っていますから、その技術を使うことができるのは、開発スピードの速い軽自動車の世界では、特に大きな強みになります。
-NMKVは軽自動車の企画およびプロジェクトマネジメントを行う会社ですが、登録車同様のクオリティのクルマづくりをめざしていますね。
小野:そうですね、一昔前は「軽自動車だからとの割り切り」もクルマづくりにはありましたが、いまや軽自動車が先進技術を真っ先に採用する時代ですから、お客様もそういう質の高い軽自動車を求めているのだと思います。ですから、NMKVの場合は、企画やデザインの段階から、「軽自動車でできることは何か」を考えるのではなく、お客様が一番快適だと思うクルマ、日本で初めてのクルマを作ろうが原点にあります。それがたまたま軽自動車だったわけです。もちろん軽自動車には規格の制限がありますから、最終的にはそれをどう軽自動車の企画の中で実現するかがクルマづくりの重要なポイントになりますが。幸いなことに、日産・三菱ともに登録車の開発をしていますので、登録車の品質感を軽自動車に採用するのは得意分野です。最初からスムーズに企画やデザインに反映できました。
兒島:今回発表したデイズルークス/eKスペースの目玉機能の一つにリアシーリングファン/リアサーキュレーターがあります。これは、「室内空間の広いクルマはエアコンの風が来ないリアシートは暑い」というお客様の声から採用を決めたものです。大型の1BOXならリアシート用のエアコンをつければいいのですが、軽自動車にそんな負荷はかけられません。そこで思いついたのがこのサーキュレーター機能です。サーキュレーターは、電力消費が少なく効率的に空気を循環できるので、家庭でも普及し始めています。メンバーのひとりが会社のデスクにおいてあった卓上サーキュレーターにヒントを得て、試しに軽自動車の天井に設置してみたところ、「これは快適だ!」と(笑)。
登録車なら出てこない解決方法を軽自動車の発想で実現するという典型的な事例だと思います
常に一番いいものをめざして、提案型のクルマづくりを
- これからがますます期待されるNMKVのクルマづくりですが、これから皆さんは何をめざすのでしょうか。
屋形:お客様に品質の高いクルマを設計の立場で、私たちからどんどん提案して実現していくことを増やしていきたいと思っています。
小野:お客様には新しいもの、初めてのものを常に提供し続けたいと思っています。スピード感という話を最初に申しあげましたが、この世界では「ライバルに追いついた」では、一瞬にして引き離されてしまいます。ですから、常に一番いいものを、そして初めてのものを送り出すんだという意気込みで取り組むことがNMKVらしさであり、日産自動車・三菱自動車・NMKVの軽自動車のクルマづくりだと思っています。
- 今日はありがとうございました。
2014年4月インタビューより ※掲載の所属、役職はインタビュー当時のものです。