商品企画

NMKVの仕事、今回は開発と並ぶNMKVの基幹ビジネス、クルマの商品企画です。日産自動車らしい軽自動車、三菱自動車らしい軽自動車、1つの商品企画から2つのクルマの企画を同時に生み出す仕事とはどのようなものなのか。商品企画グループ 和泉匡樹(日産自動車出身)、葛西宏樹(三菱自動車出身)から話を聞きました。

▲写真左から/葛西、和泉

軽自動車の商品企画という仕事

- これまでのご経歴を教えていただけますか。

葛西:私は三菱自動車に入社後、実験の仕事を3年ほど経験したのち、途中販売会社に営業派遣に出ましたが、商品企画在籍中の約7年間、ずっと軽自動車一筋に商品企画を担当しています。

- 和泉さんの経歴は異色だとか。

和泉:そうですね。私はもともとプロダクトマーケティングに興味があり、最初は携帯電話のキャリアで営業を3年ほど経験してから、商品企画を3年間担当していました。そのあと、日産自動車に中途入社したのですが、日産では主に海外向けの商用車の商品企画を担当しました。たとえば、日産が受注して話題になったニューヨークのイエロー・キャブのプロジェクトや、中国では「微型」と呼ばれる中国独自の小型車の企画にも携わりました。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、ずっと海外、それも商用車など一風変わったクルマの商品企画に携わってきました。その後、ようやく日本国内の担当になったら、今度は日本の独自規格の軽自動車ですから、本当に極端というか、異色の経歴ですね。

- 同じ商品企画でも、全く異なる経歴なんですね。そんなお二人が取り組まれている商品企画の仕事とは、どのようなものでしょうか。

葛西:一言で言うと、商品の基本となるコンセプトを作って、それを具現化するためにグレード展開や装備の仕様などを決め、それを具体化するために開発に引き渡すというのが仕事です。コンセプトづくりのためにマーケット調査を設計・収集・分析したり、仕様作りに向けて各営業部隊の要望や開発の課題などを調整したり、自分のアイデアも含めてひとつのクルマにまとめあげていきます。

- 軽自動車の商品企画については、何か違いがあるでしょうか。

和泉:NMKVに来てから、市場に今も残っている「安かろう悪かろう」のイメージが、実際は全く違うのだと改めて感じました。お客さまも販売する方の意識も多様化しているので、皆さんの声を収集すると本当に驚きます。事実、登録車にスペックで負けてないし、装備も充実していますし、ターボや四駆など、商品企画をする側の考える幅も大きいですね。

葛西:昔は軽自動車といえば女性かお年寄りのクルマというイメージで実際マーケットもそう言った構成でしたが、今では男性も含めて広い層に浸透しています。軽独特の規格などによる制約はありますが、今では登録車と殆ど変らないか、むしろそれ以上の機能のついている車種もあります。商品企画を担当する上でとてもやりがいがある車と思っています。

和泉:もともとモノづくりに関わる仕事がしたかった私としては、自分の企画したクルマが街を走っているのは、本当にうれしいですね。携帯キャリアでは、自分の思ったことをメーカーが具現化するというプロセスになんとなく違和感がありましたし、海外で走るクルマを見るより、自分の国を走っている自分のクルマという感覚には格別のものがあります。

NMKVワンボイスを導く

- 実際の商品企画の現場にはいろいろ難しさがあるように思いますがいかがでしょうか。

和泉:日産・三菱という2つの親会社から出される異なる要望をNMKVとして「ワンボイス」にまとめあげる。これが普通の商品企画との大きな違いであり、最も難しいところです。

葛西:第一弾のデイズ、eKワゴンの時は、ユーザーや市場の想定、クルマのコンセプトから完全に二つある状態でのスタートになりましたので、ひとつの企画に落とし込む作業は相当難しかったですね。両社とも「軽のスタンダードを作る」というコンセプトが根底にあったのでよかったのですが、そこから先はびっくりするくらい両社ばらばらの状態で。間に入る立場としては、まるで砂漠に放り出されたような感覚でしたね、どうしたらいいの?と(笑)。

和泉:その教訓を踏まえて、第二弾のデイズルークス、eKスペースの時には、ターゲットユーザーやマーケットは両社がそれぞれ持っていましたが、コンセプトはNMKVが主導して作ることにしたので、業務効率はずいぶん良くなったと思います。

葛西:そもそも、日産自動車と三菱自動車とでは仕事の進め方も違います。これまではそれを踏まえて両社のイイトコ取りをしながら手探りで商品企画を進めてきましたが、そのおかげでいろいろなケーススタディができました。いよいよ業務フローなどを標準化し、よりスムーズな業務推進ができる段階に来たと感じています。

- 両社の違いをNMKVがまとめる具体的な例はありますか?

和泉:たとえば、マイナーチェンジで新色を出す場合ですね。各社のラインナップで欲しい色は異なりますから、両社の要望をそのまま取り入れていたら膨大なカラーを作る必要があり、生産からも悲鳴が上がります。そこで、私たちがそもそものコンセプトに立ち返ってあるべきカラーバリエーションに集約し、それを両社に説明し、ベストな解を導き出します。

葛西:単純に両社の間にはいって、議事進行をとりまとめるのではなくて、要望を聞き入れたうえで最善の答えを導く、そんな仕事なんです。

「お客様の要望をカタチに」設計・開発との意識の共有

▲会議風景

- 第1弾、第2弾と取り組まれて、実際どのような苦労がありましたか?

和泉:はじめのころは、とにかく設計や開発の方にお話しをきいてもらうのが大変でしたね。「商品企画は好きなことばかり言って!」とよく言われました。今でも言われますけど(笑)。ただ、私たち商品企画は、お客さまに一番近い場所にいて、そのご要望をもっとも良く理解しているという自負があるので、こうしたお客さまの声を背中に粘り強く交渉します。商品企画も開発も岡崎にいていつも顔を合わせる環境にありますから、最近はずいぶん慣れていただいて、耳を傾けていただいているように思います(笑)。

葛西:お互い熱意を持ってお話して行く中で、お客様の要望こそをカタチにしないといけないということが開発と企画の共通の意識になってきたのだと思います。今では、我々と設計・開発とのコミュニケーションがかなり密になってきて、かなり細かいところまで確認しています。

和泉:NMKVの設計・開発チームの能力は凄いと思っています。特に無理難題を具現化する力は(笑)。とても頼りにしています。

- 最後に、商品企画として、これからどんなものを作りたいですか。今後の希望や目標があれば教えてください。

葛西:競合他社が数あるなかで、とにかくここにしかないオリジナリティの出せる軽自動車を世に出して行きたいですね。軽自動車はいろいろな制約があって難しいのですが是非実現したいです。

和泉:私は、親会社のブランドに貢献できるような軽自動車を生みだしたいと思っています。コストパフォーマンス、販売台数ももちろん重要ですが、スポーツカーのように、子供やみんなが憧れる夢のある軽自動車を考えられたらと思います。

- どうもありがとうございました。

2014年5月インタビューより ※掲載の所属、役職はインタビュー当時のものです。